これは「塔短歌会」姫路会員のページです
こんにちは短歌

姫路歌会記 8月は休みます
 今月は会員の作品の中から自選自解を掲載します

 

網の目を掴む足指に触れたればにいにい蝉ついと飛び発ちにけり

 網戸の網の外側に蝉が止っているのに気付いた。よく見ると足指が網目を掴んでいる。そっと触れると、ついと飛び発ってしまった。まだら模様の翅のにいにい蝉であった。


棚経の木魚の音が真直ぐに聞え来どの家も開け放たれて

 関西の盂蘭盆は8月である。盆前になると僧侶が檀家へ棚経にまわり、木魚の音が真直ぐに聞こえてくる。どの家も窓や戸を開け放っている田舎の夏の情景。

 

アングルの裸婦に恋してその肌の色つくらんと溺るる日ありき

 油絵に凝っていた。人間の肌、美しい女性の肌の色がどうしてもつくれない。美術館を回ってみた。国内の画家をあきらめかけたとき、フランスのアングルの絵に出会った。その美しさに茫然とした。その日から色づくりに熱中した。白、オーカー、赤色系、あらゆる組み合わせを試みて、ある日私はその色を手に入れた。

 

揚げ花火花散りしあと闇がきて星座一斉に降りしきるなり

 夏は各地で花火大会が盛んだ。当地では姫路港で海上花火大会が開かれた。尺玉や仕掛け花火など3千発が夜空にはじけ6万人の観客が集まった。菊、牡丹、滝、柳などが海面を鮮やかに彩った。連打のあと闇が来てすべてが終り、夏の星座が降りしきるように輝いた。


ひざの上に置くパソコンと揺れながら文字連ねゆく「ひかり」の女

 新幹線の中で目にした光景。通路をはさんで、右横の席の女性が膝の上のパソコンに向かっている。黒っぽいスーツに身を包んで一心にキーボードをたたいている。車両の揺れに伴ってその人もパソコンもかすかに揺れる。何の仕事をしているのだろう。流行作家などが、飛行機や新幹線の中で締切りの迫った原稿を書くという話は聞いたことがあるが〜。


九回の表に賭ける夏の夢どよめきマグマのごとく噴きくる

 かっては時々、野球を観に球場へ行っていた。球場にはラジオやテレビの実況中継にある追い立てるような言葉の解説がない分みごとに決まったストライクや打者の一振りで球場全体がどよめく。あの臨場感を詠んだ。またもう一つ別の体験がある。ナイターの試合中の球場のそばを通ったことがある。照明が夜空に噴き上がり歓声のたびに、球場を包む空気全体が地鳴りのように響くのである。凄い。

 

朝露の光の中を露草はふんわりと蝉の亡骸を受く

 ある暑い朝、散歩をしていると、道に仰向けになって油蝉が死んでいました。通り過ぎたのですが気になって引き返しました。道端の陰に露草が涼しそうに咲いていたのでそこに蝉を置いて祈りました。


はたはたはたはた はたはたはたはた おはぐろとんぼが日に日に殖える

 散歩コースには翅黒蜻蛉に出会う場所が決まって三ヶ所あります。足を止めて少し遊ぶのですが少しずつ数が殖えていくのが楽しみです。


ローカル線車窓に短冊さまざまに貼りて七夕電車は走る

 『ローカル線辺り』私のつたない第一歌集でございます。平成18年処暑の頃のことでした。夜テレビで「ローカル線の旅」という特集番組を見ておりまして、ふと、自分にとりましてのローカル線をなつかしく思い出しております。

 

竹林の「けびの木橋」の夕暮を盗人もそつと渡りけらしも

 二三年前、姉が入院しました折カバンを盗まれました。いくら探しても出てきませんでした。夏の終りの頃でした。病院に近い「けびの木橋」をその人もカバンを持って逃げていったのでしょうか…。

 


 

 

 

 

 

 

 

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